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啖呵を切った?

 アスカが『人間外種登録変更制度』を利用すると告げた時、両親には泣きながら引き留められた。寂しさの余りに過剰に反応したようだが、特殊能力者の息子を守ることを生きがいにした二人には、息子と別々に暮らす生活が不安でならなかったのだ。お値打ち価格の別荘は息子の元へと通うには願ってもない助けになった。 「あの二人、俺に甘過ぎんだよ」  泣きながら引き留められていた時でさえ、両親から否定されるようなことを言われなかった。一時的な気の迷いと信じるからかもしれないが、だからこそ、アスカは早いうちに生活を安定させたかった。  お値打ち価格だろうと、今の収入では父親への返済に回せる余裕がない。親子のあいだの借銭だ。有る時払いの催促なしと言われているが、うやむやにしたくなかった。借りたからには返したい。〝クソマジにヤバい声の男〟に〝金なんかいらねぇ!とっとと失せやがれ!〟と威勢よく啖呵を切ったのが、今更ながら惜しまれた。

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