男を思うと、最後に残された台詞が頭に浮かび、悔しいことに、どうしてもあの甘い囁き声で再生される。 〝日暮れに迎えに来る……〟 　その刹那、考えなしの間抜けなアソコがぴくッとし、アスカは顔を顰めた。 「ああっ、クソっ」 　いちゃつく気もない相手を欲しがるアソコに腹は立っても、男の台詞を反芻したことで、アスカには気付けたことがあった。男が占いの予約までして来た理由が見えたのだ。 〝……人に会うのに相応しい装いで待つように〟 　アスカは能力者だ。モンスターには信用されていない。ヴァンパイアからは特別扱いで嫌われている。誰かに会わせるにしても、人となりを知ってからとでも思ったのだろう。こちらにも都合があると言いたいものだが、傲慢なヴァンパイアが聞く耳を持つとは思えない。 　アスカは男に魅了された野放図なアソコを睨み付けた。所詮はヴァンパイア、平穏な暮らしを乱す相手と説き伏せる。アソコは理解したようで、おとなしくなった。