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我らが殿?

 アスカの下出に出た物言いが効いたようだ。名刺に宿る聖霊から怯えが消えた。 〝わたくしは……〟  声が小さいと言われたのを気にしたのか、声音を大きくして続けている。 〝ヤヘヱと申しまする、お見知り置き下さりませ〟  アスカは驚いた。あの男の用件を聞かされるとばかり思っていたが、自己紹介から始められるとは思わなかった。それでも両親に躾けられているアスカは、名刺に宿る精霊に挨拶を返した。 「俺はアスカ、よろしくな」  ヤヘヱが微笑んだようにアスカには思えた。実体のない聖霊がどう微笑むのかは疑問だが、ヤヘヱが自分を取り戻したのは確かだろう。裃姿のヤヘヱがテーブルの上にちょこんと座り、畏まっているのが見えた気がする。 〝わたくしに名乗られ、奇々怪々なるご様子、あなた様が何者であるかを考えますれば、至極真っ当なること、とは申せ、ヤヘヱなる名は我らが殿より頂戴したもの、卑しき身上を思いますれば、身に余る喜びにござりまする〟

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