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感に堪えない?

 ヤヘヱがテーブルの上で平伏している。実体のない聖霊に出来るはずもないことだが、口調だけで思わされる。こうした堅苦しさがヤヘヱには似合っているが、関係を築くには邪魔なものだった。  アスカは被っていたフードを払い落とし、顔を見せた。ヤヘヱにも顔を見せて欲しいと言った。聖霊である身に実体がないことは、ヤヘヱもわかっている。怪訝そうに見上げるように、仄かな光に舞う煌めきがゆるゆると揺れていた。 「あんたの昔のツレっての?」  アスカは部屋の片隅に寄り集まる精霊達をちらりと見る。取り澄ます彼らが憎らしい。その思いのままに続けた。 「あいつらなんて、俺に何言われたって全然気にしねぇぞ、で、怒鳴っちまうのさ、だから、あんたも気にすんな」 〝ありがたきお言葉、幸せに存じまする〟  ヤヘヱは感に堪えないという面持ちで、口調からそう思わせながら再びひれ伏す。 「だから!」  アスカは呆れ、笑うように怒鳴った。 「それをやめろって!」

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