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うぐぐっ?

 ヤヘヱが拗ねた。仄かな光を機嫌良さげにふわふわと揺らしていたのに、ぴくんとさせたと同時にヴァンパイアのように固まらせている。 「怒ったのか?」  凝固したような光には、むすっと頬を膨らませるヤヘヱのいじけた様子が窺い知れた。 「俺はさ、気楽にしろっつただけだぞ」 〝わたくしには!〟  ヤヘヱをヤヘヱたらしめる格式張った物言いは、あの男との付き合いによって養われたものだ。アスカにびくついたことを〝心細さ故の失態〟と言ったくらいだ。散々に甘やかされてもいるようだった。癇癪を起こした子供さながらに、意地になって言い返すのを見てもわかる。 〝使命がござりまする!〟 「その使命っての?」  アスカはヤヘヱを面白がり、からかうように続けた。 「あんた、ちっとも言わねぇじゃん」 〝うぐぐっ〟  ヤヘヱが悔しげに唸った。アスカに言い負かされまいと、頭を働かせ始めたのだろう。固まっていた光に揺れが戻り、まつわり付く煌めきにも勢いが出た。

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