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さらりと流した?
「それで、あいつ、なんだって?」
〝おおっ〟
アスカはあの男が残したメッセージを聞こうと覚悟を決めたが、ふと嫌な予感がした。ヤヘヱの〝おおっ〟に、精霊達の〝ウフフクフフ〟に似たものを感じて、不安になる。
〝おおっ、我らが殿の広き心にて、未だ皆と共にありし頃の癖が抜けませぬ故、くだらぬ話を長々致してしまいまする〟
ヤヘヱは精霊だ。そのことを常に思い出す必要がありそうだと、アスカは思う。
「で、あいつ、なんだって?」
発狂しない為に会得した技を使って、聖霊達のくだらない噂と同じに、ヤヘヱの話をさらりと流した。それでようやくヤヘヱを本気にさせられた。
〝おおっ、おおっ〟
ヤヘヱは自らを鼓舞するように感嘆したあと、厳粛な口調で言葉を繋げた。
〝我らが殿よりあなた様へ、お言付けがござりまする〟
ここでもアスカはさらりと流した。聖霊相手に、前置きのまま話が脱線しないようにするには、それが最善の方法と知っていたからだった。
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