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囲い込んだ?

 男は『人間外種対策警備』を呼ぶというアスカの計画も見抜いていた。笑いを含んだ悠然とした口調に、それをアスカに思わせる。 「クソったれがっ!」  アスカは男に背を向けたままで悪態を吐き、声を荒らげて続けた。 「フジタクミ、あんたの女か?」  言ったすぐあとで、悔やんだ。恋人でもないのに、嫉妬丸出しで問い掛けてしまった。アソコが馬鹿にするかのようにおとなしくなったのが、アスカをより惨めにしたが、状況を理解する上で、彼女との関係を把握するのは重要と、裏切り者のアソコにしっかりと反論する。  ヴァンパイアに女はいない。支払いが済んでいることで、フジタクミが実在するのもわかっている。彼女は人間の女で、男とは親しい間柄のようだ。モンスターに仕える者かもしれない。誓約書を交わした糧とも考えられる。そうした人間の女を使ってまでして、男はアスカの時間を買い取り、囲い込んだのだ。関係を尋ねて、どこに問題があるというのだろう。

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