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男を宥める?

 アソコが和解したそうに疼き出したが、アスカは知らん顔をした。こちらにはロングドレスとマントがある。男に気付かれることはない。当然の質問と思わせる為にも、男とは向き合った方がいい。背を向けたままでは弱気に見える。アスカは振り向き、僅かな身長差を意識しながら銀白色を帯びた錫色の瞳を見遣った。 〝八つ当たりか?〟  そう言った男の口調からして、にやついていると思っていたが、ハンサムな顔にはその片鱗すらなかった。叱るような厳しさを見せられるだけだった。 「フジタクミ、あんたの女だろ?」  アスカは決め付け、強い口調で問い直した。笑われないのはいいとして、腹を立てられるのは道理に合わない。それなのに、男はクソマジにヤバい響きに怒りを滲ませ、答えていた。 「私に女はいない」  男がふざけていないのは真剣な眼差しでわかるが、〝女はいない〟と来られては返しに窮する。 「えっと……」  無意識に、男を宥める言葉を、アスカは探した。

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