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これは夢?

 理由がどうであれ、アソコがおとなしくなったのは幸いだった。自分の知らないところで、恥さらしになりたくはない。ヴァンパイアがもたらす刺激は凄まじく、氷の針でチクっと冷たく刺されたようなものでも、余りの喜びに体が痺れ、意識が霞む。反撃は無理だ。流されるしかない。 〝おおおおっ〟  アスカの耳にヤヘヱの好奇心旺盛な声が響く。 〝ウフフクフフ〟  存在を忘れさせてしまうくらいに、静かにしていた精霊達も元通りになった。彼らの楽しげな声が小部屋を満たす。 「あいつら、覚えてろよ」  アスカは薄れ行く意識の中で呟き、暗闇へと、男の腕の中へと落ちて行った。次の瞬間、アスカの意識が捉えたものは、ふわふわした気分だった。ぬくぬくしてもいる。規則正しい鼓動も心地いい。優しく揺すられてもいる。 「目を覚ませ、話がある」  クソマジにヤバい響きに体が熱くなる。これは夢だ。現実であるはずがない。アスカはそう思い、甘えた仕草で首を横に振った。

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