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離さぬ?

「嫌だ」  夢なのだから、クソマジにヤバい響きに甘えても構わない。ついでに文句も言っておく。 「ごちゃごちゃ言うなって、こっちはいい夢、見てんだからさ」  夢には前世における記憶の断片が現れる。『霊媒』には自分自身を知る手掛かりともなる。アスカは『霊媒』だが、無意識で自制しているのか、今のところ見たことはない。それにアスカは眠りが深く、殆ど夢を見ないでいる。普通の人間と変わりなく、その時々の精神状態が見せる夢に迷う程度で、それさえ稀なことだった。  瞼の裏の暗闇に浮かぶものは、アスカの願望が見せる夢だ。夢であるからこそ、おかしな展開にも納得出来る。さらに次の瞬間、アスカはその身が幼さの残る逞しさに組み敷かれるのを見る。同じような幼さで熱を欲し、拙くも甘露な痺れに喘ぐ声が喉に絡まり付く。 〝離さぬ〟  クソマジにヤバい響きには至らないにしても、遠からずそうなるだろう声を聞き、大人びた熱の迸りを、アスカは受けた。

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