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地位のあるモンスター?

 男が見せた悲しみを本物と思ってはならない。この手の惑わしは、ヴァンパイアには容易く出来る。わかっていても、アスカの胸は苦しくなった。それが面白くなかった。プイと横向き、赤くなりそうな頬を腹立たしさでごまかした。 「ここ、どこ?」  聞きたいことは多々ある。有り過ぎて、どれを優先するべきなのかがわからない。取り敢えず、アスカは自分の居場所を確かめることで、男の問い掛けに答えた。男にとっても都合が良かったようだ。アスカにさらりと質問をすり替えられても、拘りを見せなかった。黙って静かに、アスカを地面に立たせていた。  アスカは周囲を見回した。日も落ちて、辺りはすっかり暗くなっているが、アスカの周りは外灯に照らされて仄明るい。ここが別荘の裏手に隣接する駐車場というのがわかった。男の仲間であるヴァンパイアの家に、それも高い地位にあるモンスターのところに連れて来られたのだ。その程度のことはアスカにも理解出来た。

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