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シリアルナンバー?
その別荘は西洋風な尖塔を持ち、居城と呼ぶに相応しい石造りの堅固な建物だった。どう見ても別荘を造り替えたとしか思えない外観だが、威厳に満ちた威圧さに不調和はない。広々した駐車場がコンクリートだとしても、裏手からの眺めを損なうこともなかった。
駐車場には客と思われる黒塗りの高級車が二台あった。運転手は玄関で主人を降ろしたあと、裏口から中へと入ったようだ。控え室らしい部屋の窓から、カーテン越しに明かりが漏れている。アスカと男は、その二台から離れた場所に停められたスポーツカーの横に立っていた。
スポーツカーがウルトラハイパースポーツカーというのは、アスカにもわかる。昨日今日の成金には買えない代物だ。由緒正しい金持ちで、何よりもこういった車への強い愛着が求められる。十数台のうちの一台を示すシリアルナンバープレートには、運動性能に優れた車好きというだけではなく、所有者の毛並みの良さも示されているのだった。
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