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反する熱?
アソコにぐっと来る甘い囁きには抗えない。アソコに支配されたアスカの心がハンサムな顔を求め、自然と首もそちらへと動く。男はアスカの剣幕に呆けていたが、いつの間にか、僅かばかり体を傾け、アスカの耳に口を寄せていた。
「君を糧にしたは……」
ヤヘヱの割り込みに何かしら思うところがあったのだろう。アスカの視線に気付くとすっと体を引き起こし、ヤヘヱが言い捨て、アスカが聞き咎めた〝吸わない〟ことについて、ヴァンパイアらしい惑わしでゆったりと話し出している。
「あやつに手出しさせない為、君の血を頂く必要など、ない」
「俺の血は激マズってか?」
男は微笑みを答えとした。そうしながら優雅な手付きで手首を掴むアスカの手を引き剥がして行く。当然だが、男の手のひらにぬくもりはない。アスカの肌にもひんやりした感覚が広がる。しかし、それに反する熱を残して、男はアスカの手を離した。
「俺はごまかされねぇぞ」
アスカはむすっと言った。
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