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一生消えない?
「あんた、しっかり、歯、刺しただろ、チクってしたぞ、吸ってないなんてよく言うぜ」
「頂く意志がなければ、その行為も、私の紋章を付けたに過ぎない」
「紋章?」
アスカはぎょっとした。首筋の目立つところに、とんでもないものがあると、男はそう言ったのだ。
「それって……」
知りたいような知りたくないような、恐る恐る話を継いだ。
「……キスマーク?」
「君は私の紋章に不服か?」
男には〝キスマーク〟という字面が気に食わない。大した違いもなさそうなことを、強調するように問い返して来たのでわかるが、アスカにはどうでもいいことだった。知りたいのはそこではない。
「キスマークだろ?一週間もすりゃ消えるよな?」
「糧は生涯において糧だ、紋章もしかり」
アスカはまたまたぎょっとした。というより、ぞっとしたという方が近い。
「あんたのキスマーク、一生消えないのか?」
「ああ……」
やっと話の道筋が見えたというように、男が笑いながら頷いた。
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