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殆ど笑う?

「吹聴するようなことでもあるまい?」  男はのんびりと言った。両親を知らないのだから、仕方のないことだと理解しても、腹が立つのは止められない。アスカは男に向かって恨めしげに答えていた。 「一生消えねぇキスマークだぞ、吹聴してるようなもんだろ」 「君の心配はそこか?」  男には些細なことなのだ。憎らしいことに、ほんの微か首を傾げ、愉快そうに続けている。 「紋章はチヲカテトスルモノにしか見えぬ、糧とて知らぬこと」  言われてみればと、アスカは思った。時代が変化したあと、糧とは誓約書を交わすのが定められた。ヴァンパイアはそれを隠していない。糧も自慢げに話している。そういった糧達には、〝キスマーク〟は勲章となる。ひけらかせずにはいられないだろう。 「仲間内の秘密か?」  アスカはずばりと聞いた。無表情が常のヴァンパイアに殆ど笑うように話されては、何を思ってのことなのかが、今一つはっきりしない。直截に聞くのが早いと思えた。

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