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頭痛の種?

 これが恋愛絡みでの探り合いというのなら、〝特別〟と言われるのも悪くない。相手がヴァンパイアだろうと、定番の無表情さに慰められ、安心安全な男からの褒め言葉と、ウキウキしていた気もする。男の粋な笑いと物柔らかな雰囲気に胡散臭さを感じた自分が、アスカには本当に残念だった。  〝キスマーク〟がヴァンパイアにしか見えないというのは吉報だった。両親に知られる心配がなくなったからだが、心配事というものは、一つ解決してもすぐに別の何かが浮上する。アスカには両親の他にも頭を悩ませる存在がある。聖霊達だ。彼らが男と結託したとは思わないが、結果としてアスカを罠にはめたことにはなる。 「ああ、クソっ」  聖霊達は〝キスマーク〟の目撃者だ。これ程に美味しいネタを放りはしない。騒いで騒いで騒ぎまくる。男の〝キスマーク〟がヴァンパイアの未知なる恐怖からアスカを守るものだとしても、永久不変な頭痛の種を持たされたことには変わりない。

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