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かわいそう?

「ぐふふふ」  アスカは嫌らしい笑いを漏らしながらハンサムな顔を見遣った。男の目付きが訝しげなのは、一人でぶつぶつと不機嫌に喋っていたアスカが、突然ニタニタと機嫌良さげに笑い出したからだろう。銀白色を帯びた錫色の瞳も、アスカを怪しむようにその色合いを濃くする。  男の落ち着きに迷いはない。アスカを見返す様子も余裕綽々だが、アスカには子供のように癇癪を起こす男の哀れな姿が見えていた。落ちこぼれ扱いされる『霊媒』の現実的な予測だ。占いよりも当たると、アスカは思っている。 「かわいそうに……」  アスカは心にもない台詞で、男に同情してみせた。男には訳のわからないことでも、アスカにからかわれたことは理解している。男はヴァンパイアの無表情さにはない真面目さで、アスカの同情を黙殺した。つつき回さずに、取り合わないことにしたのだ。憎らしい態度だが、そう遠くない日に笑って遣れるのだからと、アスカは逆らわないことにした。

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