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しわがれ声の男?
「ああっと」
アスカは冗談にしようと思い、わざと語尾を上げて話を継いだ。
「無用の長物?上等じゃね?あんな塔、作りやがってさ、監禁くらいにしか使いようがねぇ、よな?けど、あんたにはそんな趣味、なかった、だろ?」
エグい塔付のクソ豪華な別荘を建てた奴はマジで変態だ。そう続けて、男を笑わせるつもりだった。それが男に真面目な顔で見返されては、勢いもそがれる。
「なんだよ、文句あんのか」
「趣味……」
クソマジにヤバい響きから甘さが消えていたのにはびっくりしても、アスカには続けて言われたことの方が衝撃的だった。
「その程度で普請など、命じぬわ」
クソ豪華な別荘を建てたのは、この男だった。あの尖塔も本気で作ったと、遅まきながら気付く。そのせいだろう。不意に聞こえたしわがれ声に、アスカは飛び上がってしまった。
「ヌシ様がお待ちでございます」
気配もなく、突然だった。それもそのはずだ。しわがれ声の主は、ヴァンパイアだった。
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