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いい刺激?

「まぁな」  アスカは小さく呟いた。耳ざといヴァンパイアもだが、聖霊達にも聞かれないよう続く言葉は胸のうちに響かせる。 「俺の楽しみには悪かねぇさ」  今現在、聖霊達の最大の関心事と言えば、アスカには安心安全な男の恋愛事情だ。高潔らしい男が欲望に理性を失う姿を見逃すまいとしている。アスカといちゃつく気もない男に、どういった妄想を抱いているのかは知らないが、〝フジタクミ〟との関係が余りに爽やか過ぎて話にならないのかもしれない。アスカを割り込ませ、どろどろした修羅場へと持ち込めたのなら、彼らにすれば万々歳だ。  アスカは聖霊達が巻き起こす騒動に乗っかるつもりでいる。彼らの飽くなき〝悪い虫〟にも余裕を見せる男を翻弄してやるのだ。それで疼く胸もあやせる。少しくらい、ひねくれたことをしても害はない。 「あんた、つまんねぇ付き合いしてそうだし」  アスカは男の背中を見詰め、息だけでそっと囁いた。 「いい刺激になんじゃね?」

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