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ただの少年?
普段、精霊達の喋りは散漫で、アスカには苛立たしくてならないのだが、応接室にいる男二人についての噂は明快で、すんなりと頭に流れ込んだ。二人ともヴァンパイアになりたがっている。そうすることで時間を手に入れるつもりでいた。
時代が変化し、モンスターが世に認められたことで、時間の捉え方に疑問を持つ人間が現れたが、初期にはおとなしかった者達も、ここ最近になって動きを活発にし始めた。時間は最期の瞬間の一分一秒までが等しく、地位や財産でどうこう出来るものではないが、そうした者達は時間さえ買えると考えたようだ。
男二人もその交渉に来ていた。ヌシは来客を理由に帰るよう伝えたが、男二人は取り合わなかった。子供扱いし、居座っている。モンスターも法に従う現代ではヌシもただの少年だ。男二人が日頃からそう思っていることが、精霊達が口真似する会話でわかった。
〝ガキが偉そうに〟
〝チヲカテトスルモノに変異すればこちらのものさ〟
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