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伸びやかな?
「子供に大人の事情は理解出来ないか……」
その男は、難しそうな理屈で胸に隠す卑しさを正しいと惑わせるつもりのようだ。ヌシのほっそりした優美な肢体をとっくりと眺め、諭すような口調で話し続けている。
「『人間外種特別保護区域』を観光化したのは、全面的な解放に向けての一時的な処置だ、人間外種への優遇もそれで終わる、おまえがその後も保護を求めるのなら、味方を誰にするべきか、少しは考えろ」
ヌシの返事を待たずに、もう一人が口を挟んだ。単純な解決法を言うだけあって、そちらには下卑た嫌らしさはない。
「金か?」
ヴァンパイアの金満ぶりは有名だ。承諾しない理由をそこに絡めて言葉を繋げる。
「それなら幾らでも用意してやるぞ」
ヌシはそのどちらのことも面白がった。二人の話に〝ウフフクフフ〟と笑い合う精霊達と一緒に、少年らしい伸びやかな笑い声を響かせたのだ。アスカにはわかるが、男二人にはわからない。呆然としてヌシを見ていた。
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