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一番の見どころ?

 応接室には金気臭さが強まっていた。鼻に付く異様な甘ったるさもある。人間を幻惑する時に出すものだろう。アスカにはムカつく匂いだが、普通の人間にはわからない。能力者でもモンスターに〝特別〟と認められたアスカだけに気付けることだ。〝特別〟が〝落ちこぼれの用なし〟を意味するように、毒にも薬にもならない気付きでもある。時代が変化し、モンスターが自由に闊歩する現代では法律が優先する。男二人も、気に入らないのであれば訴えればいい。ここでアスカが目覚めさせるまでもない。  アスカは二人が廊下に出ようと横を通り過ぎて行くのを目で追った。安心安全な男は完全無視だが、アスカにはそれが出来ない。二人の持ち物に宿る精霊達の騒ぎぶりを無視するのは難しい。ちょっとやそっとで、おとなしくなりそうもない勢いだ。彼らはヌシに、二人を幻惑するよう煽ったのは退室させる為ではないと叫び、一番の見どころを独占するのかと喚き散らしていた。

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