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憧れの上級生?
男の背後で体を小さく縮めても、頭半分は男の肩先から食み出てしまう。頭を引っ込めると、哀れな感じに尻が出っ張る。アスカは諦め、背筋を伸ばして男の肩先から顔を出し、ヌシを見返した。ヌシはアスカを見遣るのに、少しだけ視線を上向かせていた。少年で変異した背丈は低くないが、高くもない。気にしているのかはわからないが、ヌシの瞳には間違いなく厳しさがある。
「会えて嬉しい」
気持ちを隠す気がないのだろう。ヌシの声は苛立ちに掠れていた。嬉しさをどこにも匂わせない響きに、男の肩先に見せるアスカの顔も青ざめる。
「僕が……怖いの?」
男も口にした言葉だ。ヴァンパイアの共通認識かもしれないが、ヌシの子供っぽさには寒気がする。一瞬だが甘ったるい金気臭さが漂ったことも、アスカをぶるっと震わせた。
「やっぱ幻惑出来ないや」
ヌシは照れ臭そうに笑った。憧れの上級生に恥じらう下級生になり切り、ふてぶてしくもアスカに媚びてみせたのだ。
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