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落とし前?
ヌシはヴァンパイアの頂点に位置する。生意気な口を利く者はいない。品のいい美しさからして、人間であった頃も同様と思わせられるが、いつの時代も男二人のような怖いもの知らずはいるもので、絶対とは言えない。それもヴァンパイアに限れば有り得ないことだった。
糧は人間だが、ヴァンパイアの信奉者だ。うっとりと夢見るようになついても、アスカのように怒鳴ったりは出来ない。能力者でも〝特別〟なアスカだからこそのことだ。アスカには現実としての自分がある。ヴァンパイアが描き出す夢とも無縁だった。
現実は頼りになるが失敗も招く。〝なしなし〟と言ったところで、魔法のように消えてはくれない。男の無表情が揺らいだのを見ても、非常にまずかったのがわかる。目を背けても無駄だ。現実はしつこく付きまとう。
「落とし前は自分で付けろってこった」
アスカはそう呟いて一歩前に出た。男に腕を掴まれ、さっと引き戻されたのは想定内のことではあった。
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