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やってられない?
「クソったれがっ」
アスカは思わず呟いた。占いの小部屋でも起きていたことだと気付いたからだ。男がマントを払い落として見ようとしたのは、この女々しい顔ではなかった。〝みつき〟と呼び掛けた相手がいるかどうかを確かめようとしたのだ。〝キスマーク〟を付ける直前に〝目を閉じてくれ〟と言ったのも、それが理由とわかって来る。男はケチ臭い根性なしでもある。浮気を目撃されるようで不安になったのだろう。それでアスカの瞳を敬遠した。
「そんな奴を助けろだ?」
アスカは胸のうちに言った。
「冗談だろ」
突き放すように続け、さらにきつく男を睨み返した。男がたじろいだ。射抜くような眼差しにも迷いが浮かぶ。アスカはざまを見ろと思ったが、その罵りで終わりにはならない。
〝殿……〟
細く柔らかな声がアスカの意識に溢れ出る。アスカ自身の意識はやってられないと思っているが、安心安全でケチ臭い根性なしを呼ぶ声の切なさには、胸を熱くしてしまう。
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