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負けてた?
ヌシの口調は楽しげだった。嘘がバレるよう仕向けたのは自分と、アスカに教えているのだ。
「あの人の血筋だから目通りが許されたってのに、全部嘘だったからね、左遷っていうのかな、キイはそいつを領地の外れに飛ばしたよ、初めから遣り直せってこと、それが出来る奴だって信じてたみいた、そいつにしたら、そんな嘘、些細なことだよ、キイに尽くしていたからね、自分に自信もあったし、〝女にうつつを抜かすたわけなど領主の器に非ず〟って悔しがってた、キイを討つのが天命とも言ってたな、それで僅かな護衛とあの人を連れて、遊びに出掛けたところを狙ったんだ」
ヌシはくすっと可愛らしく笑ってから話を継ぐ。
「いつものように、キイは援軍が来るまで戦い抜いたよ、火を放たれてたし、勝ち目はなかったけどね、だけど、そいつ、気持ち的には負けてたな、だってあの時、キイにはそいつへの思いなんてこれっぽっちもなくて、あの人への愛しかなかったからさ」
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