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外れちゃった?

 憎しみもまた絆を作る―――ヌシは家臣を哀れみ、そう言うかのように静かに息を吐いていた。男にもわかっていたのだろう。細く柔らかな声に憎めと言ったくらいだ。謀叛が男の関心を引く為のものと気付いていた。家臣の願いは、自分への憎しみを胸に、失意のうちに男を死なせることだった。それを男に跳ね返されたのだ。男は諦めることなく戦い抜き、人間としての最期の時にも、恨みに迷わされることがなかった。 「だけど、愛で変異したの、キイだけなんだ、愛なんて、いざとなったら脆いからね」  ヌシは家臣に同情してみせていたが、それも話を盛り上げようとしたからのようだ。すぐに口調を弾ませ、言葉を繋ぐ。 「最強の激しさってさ、やっぱ復讐じゃない?キイの変異も、絶対憎悪だって思ってた、だって信じてた家臣に裏切られたんだよ、でも僕の予想、外れちゃった」  ヌシは子供のような明るさでケラケラと笑う。アスカには、何が面白いのかがわからなかった。

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