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からかいにも平気?
「お兄さんって、せっかちだね」
「あんただって気長には見えねぇぞ」
ヌシはアスカに思い知らせようとして、回りくどいことをしたが、そこにある感情は焦りなのだろう。ヌシには手っ取り早く済ませたいことがある。アスカはそう踏んで話を継いだ。
「俺に拒否らせねぇ為だけに、こいつを使った、だろ?」
「うーん」
ヌシは面白がるように唸った。男を眺め、いつの間にか無表情に戻っていることに、くすっと笑う。男も馬鹿ではない。アスカの様子が急におかしくなったのが、ヌシのせいと気付いている。すぐにでも何があったのかを質したいはずだ。それが出来ない男の器量不足を、ヌシは笑った。男を挑発するように続けたのでわかる。
「キイは真面目過ぎるよね」
ヴァンパイアは誰もヌシには逆らえない。変異がもたらす専制的な影響力で、ヌシが定めた掟からも外れられないでいる。糧もその範囲内にいるが、アスカは〝特別〟だ。ヌシのからかいにも平気で言い返せた。
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