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自由にして?

「クソな話だ」  アスカは心の中で呟き、苛立ちながらも男を差し向けたヌシを思って続けた。 「あんたはもっとクソだな」  今のアスカにモンスターを塵にすることは出来ない。方法を知らないのだから当然だが、聖霊達にこっそり知らされていたとしても、男を塵には出来ない。アスカの魂には男が人間をやめてまでして守った女がいる。矛盾する思いに躊躇うはずだ。わかっていたからこそ、ヌシは精霊達を追い払い、魂の記憶をアスカに見せた。  ヴァンパイアは時間を超越し、半死人と言われるように、死を遠ざけた肉体に変異した時の自我を持って生きている。その魂はひんやりした肉体に冷凍保存されているようなものだ。変異に凍らされた魂では、ヌシの専制的な影響力を許すのも頷ける。 〝たすけ……おねが……い〟  アスカは細く柔らかな声を思い、そこにある本当の願いに気付いた。男の魂を溶かし、ヌシから自由にして欲しい。声は今のアスカに出来ることを願っていた。

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