195 / 814

有益な情報?

「ったく、冗談じゃねぇぞ」  細く柔らかな声を―――昔の女を、何百年も引きずる男を助ける義理は、アスカにはない。その女の魂をかかえていようが関係なかった。 「ああ、全然ねぇよな」  男はアスカをアスカとして見ていないのだ。その事実に怯えはしたが、〝みつき〟と本名で呼ばれたあと、昔の女を求め、瞳だけに集中された現実には腹が立ってならない。それだけで細く柔らかな声の願いを断る理由になると、アスカは思う。 「なのに助けろだ?」  アスカは胸のうちで悪態を吐いた。 「くそったれがっ」  しかも声は男が塵になるのを願っていない。ヌシからの解放だけを願っている。アスカの能力で果たせることだと言いたいようだが、今のアスカには聖霊達の声を聞くことしか出来ない。彼らの話はろくでもない噂ばかりで、有益な情報となると皆無だ。魂の記憶にしても、精霊達から聞かされたのではない。ヌシが仕掛けたことで知った。それでどう助けろというのだろう。

ともだちにシェアしよう!