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成就せず?
「ったく……」
アスカは胸のうちでむすっと繰り返した。
「冗談じゃねぇぞ」
そうは思っても、男を自由にしようと頑張ることはわかっている。アスカ自身の硬派な性格が黙っていない。出来ることを必死に探す自分の姿がアスカには見えていた。
「なんの得もねぇのによ」
アスカの魂は男が何百年も引きずる女の魂でもあった。知らずにいれば穏やかでいられることも、知ったあとでは落ち着かないものだ。そのアスカを脇役に、聖霊達は男との修羅場を思い描いている。語り種になるくらいのすったもんだを夢見てワクワクしている。アスカは激しさを増した自分の役回りの惨めさに、精霊達と一緒に男をからかうという企みにも、思った程の楽しさを感じなくなっていた。
「そういやぁ……」
精霊達のワクワクを思い出したからだろう。占いの小部屋で精霊達に言った男の言葉がアスカの頭に浮かんで来る。
〝我らが約束、反故には出来まい、さすれば、そなたらの願い、成就せず〟
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