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夢幻の中?
あの時、アスカは男がわざと古めかしい物言いで興味のなさを伝えようとしたのだと思っていたが、本当のところは精霊達がワクワクする真の目的に気付いての台詞だった。聖霊達にはモンスターとした約束がある。アスカに何も教えられないのでは、魂の解放を望めようもない。男は小部屋の片隅で畏まっていた精霊達に、〝またぞろ悪い虫が騒ぎ出したか〟とも話していたが、それも彼らのお節介を揶揄してのことだろう。
「ってことは……」
いつもは怖がって近付かない変態屋敷に潜り込んだ精霊達の異様な熱意は、噂のネタ欲しさという単純なものではなかったことになる。
「もしかして俺の力って」
アスカは精霊達と同じワクワク感で思いを繋げた。
「修羅場?ってか?」
胸のうちで半信半疑に問い掛けたが、上辺だけのことで最初から疑いはない。男が引きずる女の魂は過去という夢幻の中だ。今を生きるアスカが好きにしても四の五の言えない。そこに答えは出されている。
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