198 / 814
その愛に?
ヌシが〝絶対に渡さない〟という相手を、〝お兄さんには〟と限定した時に気付いても良かったが、アスカの能力を後押しする聖霊達がいないのだから仕方がない。アスカが知れる情報は限られ、普通の人間と変わらず、見聞きした事実をもとに突き詰めて行くしかなかった。それには多少時間も掛かる。
仕事では〝颯爽と明快にぴたりと当てる占い師〟と銘打つアスカだが、聖霊達がかき集めた噂の又聞きと、客である人間に気付かれる心配がないからこそ言えることだった。その〝特別〟でお笑いな能力を、ヌシが恐れている。聖霊達を追い払ったのは、アスカを無防備にする為でもあったのだろう。
「で、こいつが盾ってこった」
男が示す思いは、愛に他ならない。変異がそれを証明している。何百年も引きずる昔の女は最上位だが、アスカを糧にしたことも、ヤヘヱを家臣にしたことも、男の愛がさせたことだ。傲慢で憎らしいが、奥深い優しさもある。その愛に男は動かされる。
ともだちにシェアしよう!