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浄化の機会?

 アスカに背を向けて立ちはだかる男は、家臣の裏切りにも諦めることなく戦い抜いた。最期を覚悟した時には、その身を犠牲にして愛を貫いた。愛する者を守れるのであれば、モンスターになることも厭わなかった。これが男を塵にし兼ねない血の系譜と呼ばれる記憶だが、アスカにとってはムカつく記憶というしかないものだった。  アスカは悔しさを込めて胸のうちでさらに続けた。 「カッコ付け過ぎ」  ヌシが言うように〝復讐〟であったのなら、理解もしやすい。その後の年月、服従を余儀なくされるのだ。愛の為にそこまでする自信がアスカにはない。男の稀有な変異にのぼせ上がるヌシの方がまともに感じる。 「けど、人間で死ぬの、やめた奴らだ、まともじゃねぇ」  モンスターの死は塵となって訪れるが、その魂が死者として彷徨うことはないだろう。愛による変異も例外とはならないはずだ。死を遠ざけた肉体に冷凍保存された魂に浄化の機会が与えられるとは思えなかった。

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