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片付けようぜ?
ヌシに何を頼まれるにしても、このまま男に任せていては話が進まない。男は〝あやつのことは私に任せよ〟と言っていたが、それで男が何をしたのかというと、夜を徹して睨み合うのも構わないといった姿勢でヌシとのあいだに立ちはだかることだけだった。そういえば男はこうも話していたと、アスカは思う。
〝君も早く終わらせたいだろう?〟
男の態度のどこをどう取れば早いと言えるのだろう。ヴァンパイアは時間を超越するが、変異は時間に対する感覚まで鈍くするようだ。ヌシも焦っている割に、だらだらと話を長引かせている。男の早さもヌシの焦りも、人間としてのアスカの感覚からは外れていた。
「ったく」
アスカは弾む思いに促され、誘うように言葉を繋げた。
「さっさと片付けようぜ」
アスカがヌシに話し掛けるのを、男が苦々しく思っているのは明らかだが、何も言わない。それどころか、さり気なく首を動かし、アスカに向けていた視線をヌシへと戻していた。
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