男の無表情は僅かな瑕瑾もない見事さだった。アスカからヌシへと向き直った瞬間の変貌は素晴らしく、一切の心情が完璧に押し隠されている。それでもさり気ない動きに見せたほんの微かな気持ちの揺れが、ヌシには気付けていたようだ。 「うーん、お兄さんのこと、甘く見ちゃダメってわかってたのにな」 　ヌシは美しい顔に妖しさを匂わせ、大人びた顔付きでアスカを見返す。それを嫉妬と悟らせるように、嫌みな口調で話を継ぐ。 「お兄さん、人間相手に占いなんてしてるでしょ、フードに顔を隠してさ、なんかビクビクしてるみたいで笑えちゃった、それってキイの好みじゃないもん、キイのあの人、淑やかで儚げで、でも凄く聡明だったからさ」 「あんた、そうやってグズグズ言わねぇと話が進まねぇのか」 　アスカは苦笑するように言った。そのあとで強い口調で言い返す。 「てか、俺を〝落ちこぼれの用なし〟にしたの、あんたらだろ、精霊達にクソったれな約束をさせてよ」