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千里眼じゃねぇ?
「おいおい」
アスカはヌシが見せた色香に取り敢えず戸惑ってみせた。男とでは誘惑の意味に差があることくらいわかっている。〝ウフフクフフ〟と笑い合う精霊達の楽しみと、〝クソったれがっ〟と怒鳴り付けるアスカの腹立ち程に遠い。つまり色仕掛けの尋問と思えばいいようだ。そう理解したことで、どういった態度で言葉を返せばいいのかにも気付く。
「勘違いすんなって」
アスカは男臭さ一杯に、にやりとして言った。人気ゲームの主人公似の女顔で、ロングドレスにマント姿だ。間抜けにしか見えないだろうが、気持ちが大切と、山男並みのヒゲボーボー気分で粋がった。
「昔じゃねぇ、今の話さ」
真正モンスターには脅威でも、アスカが〝落ちこぼれの用なし〟なのは確かだ。それを男臭さたっぷりに、しかもねっとりと皮肉るように伝えた。
「俺は千里眼じゃねぇぞ、突っ立ってるだけでお見通しってな訳には行かねぇのさ、占いだって精霊達のろくでもない噂頼みだぜ」
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