229 / 814
空気が呼応?
「ざけんじゃねぇ」
アスカは声を荒らげて言った。熱く開放的な声音が中世の居城のような屋敷の応接室に、場違いに響き渡る。人間的で硬派なアスカの熱情が、長年のあいだ密やかに生きて来たヴァンパイアには疎ましいのかもしれない。全員でひややかに反応し、アスカの猛々しさを一瞬で凍り付かせている。
「ったく」
アスカはめげなかった。硬派の意地で強気に話す。
「あんたのパシリなんかにゃならねぇぞ、あんたらの問題に、首、突っ込みたかねぇし、なのに人狼だ?冗談も大概にしろっての」
ヌシが顔付きを変えたが、何も言わなかった。代わりにしわがれ声がすすっと前に進み出て、答えている。
「お見送りさせて頂きます」
つまり〝とっとと失せろ〟と丁寧に言われたのだ。全くの間抜け扱いされたとも言い換えられる。アスカはかっとした。そして怒鳴った。
「クソったれがっ!」
同時に、腹の底から放った激しさに空気が呼応し、周囲にぱっと振動の波を描き出す。
ともだちにシェアしよう!