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片手で一捻り?
「そっか!」
アスカの頭にぱっと答えが閃いた。
「クソガキ!アルファが人間になんかさせてるって思ってんだな!」
アスカは自信満々に叫んだが、男にはふっと鼻先で笑われた。勢い込んだ分、馬鹿丸出しで決まりが悪くなる。こういった時に、世の中には媚びるように可愛く無邪気に笑い返すという技がある。俗に言う愛想笑いというものだが、それを使えと思いはしても、生まれ持っての性格はままならず、ただ一途にむすっとするばかりだった。
「ったく、好きに答えを出せっつったの、あんただろ」
憎まれ口も、生まれ持っての性格の付録品だ。考えなしに出る。
「気に入らねぇなら、なぞなぞなんかしてねぇで、ちゃちゃっと言えよ」
途端に男が表情を消した。暗く翳った顔付きに思いを隠し、アスカの顎に触れていた手をすっと素早く喉元へと下げている。普通の男のように腹を立てたとも言えるが、男はヴァンパイアだ。その怪力でアスカの首くらい片手で一捻りだろう。
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