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大きく外して?
アスカのからかいが男にも伝わった。暗く淀んでいた白蠟気味の肌に、仄かな赤みが差している。男はアスカに腹を立て、それを恥じらった。アスカの喉元に片手をへばり付かせて放さない異様さにも、今更ながら驚いている。何が原因でそうなったのかを聞くつもりはアスカにはない。無視されるだけだ。昔の女絡みのクソ面白くない話を聞かされる危険もある。どちらもアスカには勘弁して欲しいことだった。
なぞなぞばかりでちゃちゃっと進まない話でも、そちらをつつき回す方が楽しいに決まっている。ヌシとアルファのただならない関係を匂わせたくらいだ。男も無視しないだろう。となると、アスカにはこの台詞が重要に思えて来る。
〝君を無能と断じた者ども、無知なれど油断してはならぬ〟
『人間外種対策警備』の人間達のことだ。アルファが彼らに何かをさせたと考えても、おかしくないことになる。男には鼻先で笑われていたが、的を大きく外してはいない気がした。
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