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元からねぇ?

 『人間外種対策警備』の能力者達は、アスカのように人間種から人間外種へと登録変更した者達で、法的にはモンスター居住区に暮らすモンスターだが、真正モンスター達には飽くまでも人間だった。精霊達にとってもそれは変わらない。持ち物に宿って聞き耳を立てている。しかし、大概はろくでもない噂の下にうずめられてしまい、アスカの耳には入らない。占いに必要なことしか聞こうとしないせいもあるが、彼らの関心が男に集中する今、アスカには聞くだけ無駄なようにも思えた。  聖霊達は人間の言動を余すところなく記憶する。とはいえ、彼らにも彼らなりの優先順位がある。喧嘩上等で生きていた頃の逃げ足の早さを思えばわかる。男が繰り広げるだろう修羅場にワクワクしている真っただ中では、アスカに害が及ぶと判断するまで危機的状況を自主的に騒ぎ立てはしないのだ。 「てか」  アスカは納得したように胸のうちで呟いた。 「あいつらに危機感なんて元からねぇぞ」

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