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こぼれ出る?
遥か太古の昔、この世にはモンスター討伐の鍵となった能力者が存在した。人間には『霊媒』と呼ばれ、ヌシには〝特別〟なモンスターと言われた者のことだ。幾多の年月を隔てて人間に転生し、その時々に精霊達の声を聞き、唯一無二の能力を使いこなして来た存在だ。継ぐ者として現代に誕生したのがアスカだった。
時代の変化によって無用になった能力だが、存在自体の利用価値は残されている。精霊達がモンスターの悠久の歴史に精通するからで、特に人として生きた記憶を持つモンスターには弱みともなる。それを理由にモンスターの過去について噂をしないという約束が交わされた。
精霊達は約束を守ってアスカにも話さないでいる。モンスター居住区に出入りする人間の噂にも後が怖いと慎重だ。それなのに男二人にくっ付いてヴァンパイアの巣窟に入り込み、図太くも心細げにこう言った。
〝ヌシ、怖い〟
あの時にした返事がアスカの口に自然とこぼれ出る。
「アホがっ」
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