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怪力を意識?
アスカの喉元を掴んで放さないのが異様なことは、男にもわかっている。男自身が認めるように、ヴァンパイアの人間への無関心さを話していた。
〝糧とする血、弄ぶべき感情、人間に求めるは、二つのみ〟
ヌシについてであっても、それがヴァンパイアというものだ。昔の女を何百年も引きずろうが、男も同じだ。だからこそアスカは男をからかった。男は〝二つのみ〟のどちらもアスカにはしていない。喉元に掛けた手を離そうとしないことにも今更ながら驚いていた。考え込んだのはアスカのからかいに答えを出そうとしたからだろう。
「俺はさ、他の誰でもねぇ、俺なんだよ」
アスカは自分に昔の女を見ようとする男の目を覚まさせたかった。素っ裸になれば違いも歴然だが、男には時期尚早だ。お楽しみは修羅場に取っておくのがいい。
「クソガキも言ってただろ」
怪力を意識し、弾みで一捻りされないよう身構えながら言葉を繋ぐ。
「あんたが守らなくても大丈夫ってこった」
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