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都市伝説?

 変態屋敷の裏手に隣接する駐車場は外灯に照らされて仄明るい。深夜近くの深閑とした空気にも包まれている。その僅かな明かりと人気のない静けさが、ふとアスカには〝やりてぇ〟にも最適な場所に感じられた。もちろん、男の〝逆らえぬ〟を無効にしての話だ。声に救われ、恥かきにならずに済んだのだ。男とも決着を付けていないことになる。  正直に言えば、アスカは威勢のいい元気な声に飛び上がっていた。アソコも同じ驚きに縮こまされた。救われたとはそうしたことだが、声に目を向け、そこに二十代前半の男を見たせいもある。  男はヴァンパイアだった。無表情という言葉が欠落したような笑顔でも、見間違いようがない。人好きのする顔立ちは十人並みといったところで、背丈もアスカより低く、体格的にも弱々しげだが、銀白色を帯びた錫色の瞳に白蠟気味の肌で嫌でも知れる。 「ったく」  ヴァンパイアの美男揃いは都市伝説だった。アスカは素直にそう思うのだった。

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