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〝代表〟と〝我らが殿〟?

 アスカが後ろに下がったことで、〝キスマーク〟にとどまっていた男の手も自然と離れた。アスカの気恥ずかしさを汲み取ってといった思い遣り深い柔な話ではない。示唆にも動じない二十代前半のヴァンパイアに、明らかな指示を与える為にしたことだ。 「消えろ」 「うぅぅん」  二十代前半のヴァンパイアが口答えするように唸った。アスカの警戒を緩め、逆に好感を持たせたとも知らず、意固地になって続けて行く。 「僕はヌシさんとの話し合いが終わるのを待とうと思って来たんだ、案外と早く終わって驚かされたけど、嬉しい誤算だね、代表のサインがソッコーで手に入る」  〝代表〟が男なのは聞き直すまでもない。男は〝キイ〟と絶対に名乗ろうとしなかった。組織の代表というのが事実なように、身内に〝キイ〟と呼ばせないのも確かなことだ。二十代前半のヴァンパイアをヤヘヱと思えば理解も出来る。〝代表〟と〝我らが殿〟に違いはない。アスカにはそれが見えていた。

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