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なんつった?

 二十代前半のヴァンパイアは男に向かって話していたが、視線は変わらず男とアスカのあいだを行ったり来たりしていた。銀白色を帯びた錫色の瞳を機械じみた速さで動かせるのも、ヴァンパイアならではだろう。その正確無比な動きが突然ぴたりと止まった。くりっとした目の純朴そうな眼差しの先にはアスカの顔がある。 「僕はフジと言います」  不意に名乗った口調は楽しげだった。そこに胡散臭さを感じもしたが、挨拶を無視することはアスカには出来ない。 「俺はアスカ、よろしくな」  二十代前半のヴァンパイアには―――フジにはアスカの落ち着きが期待したものではなかったようだ。落胆気味に、それでも奮起するように自己紹介を続けて行く。 「ちなみに名前はタクミです、ご両親様には既にお会いし……」 「ちょっと待て!」  アスカは無自覚なままに怒鳴っていた。フジが驚き、ヤヘヱにも通ずるびくつき方で震え出そうが怒鳴らずにはいられない。 「今!なんつった!」

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