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図に乗る?
「優遇処置といっても不正には課税される、腹の探り合いだから仕方ないよね」
フジは器用な手付きで、パンパンに膨らんだ鞄からタブレットを取り出しながら言った。ひ弱に見えても怪力自慢のヴァンパイアだ。ずっしりした鞄を軽々小脇に抱えて続きを話す。
「だけど人外税局の職員は人間で、チヲカテトスルモノの幻惑にピリピリしている、それで特別調査にも『人間外種対策警備』の立ち合いが義務付けられたよね」
そう続けて男に近付き、嫌と言わせない気迫でタブレットを突き出す。怒り狂う男をものともしない勢いは、愛されることから来る甘えだろう。父親が母親に勝てないように男の愛がフジに力を与えたのだと、アスカは思う。
「クソっ」
父親のヘタレ顔が思い出されて来る。男の顔が仁王のようでも、内心ではヘタレているに違いない。
「こっちは仕事ってんで我慢してんだぞ」
アスカは好戦的に呟き、タイマン勝負を前に図に乗るフジを威嚇しようと腕を組んだ。
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