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冷笑的に?

 アスカにとってのタイマンとは、恨みなしに思い切り拳を繰り出すことに他ならない。修羅場も同じだ。気を使っていては勝負にならない。フジが気を使う隙間もないくらいの余裕を見せてくれたことは、タイマン相手として不足のないところを示してくれたことにもなる。フジの余裕が男に癒しを別に求めさせる程の無神経さでも、修羅場を前にアスカを牽制したと取れなくもない。嫌みったらしく〝妬いたらどうよ〟と言ったのは軽いお返しでもあったのだが、アスカの読みは甘く、フジから痛烈な一発を食らわされることになってしまった。 「バカ……なの?」  続けてヤヘヱにも時代錯誤な物言いで同じ台詞を言われてしまう。 〝たわけがっ〟  拳でのタイマン勝負なら、アスカは即座に殴り返していただろう。この状況では怒鳴り返すというべきだが、そうした気分にもならないでいる。アスカは冷笑的に身構え、声音を低めるだけにとどめて言い返していた。 「ふざけてんのか?」

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