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お終いだぜ?

「ヤヘヱさん」  フジの口調は焼き餅焼きのヤヘヱを気遣ったというには荒っぽかった。〝忠義者〟の何が気に入らないのだろう。アスカは首を傾げてフジの様子を見守った。 「ナギラさんはむさ苦しくなんかないよ」  そちらの方かと理解はしたが、むきになる程のことにも思えなかった。ふっと思わず笑いが漏れたが、フジには睨まれてしまった。その不機嫌さのまま、フジは玩具のような腕時計にまくし立てていた。 「毛深いからもっさりして見えるけど、もふもふだし、お風呂嫌いというのは困りものだけど、それだって代表に注意されたらきちんと入るしね」 〝ふおふおふお〟  ヤヘヱが気味の悪い声を出し、煌めきに揺らす光の粒も意地悪く不規則に輝かせる。そうしながら尊大な口調で言葉を繋げた。 〝むさ苦しいとは、うぬが申したことに他ならぬ〟 「おいおい」  アスカは呆れたように言った。そしてからかうように続けた。 「ヤヘヱさんよぉ、それを言っちゃぁ、お終いだぜ」

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