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異形のもの?
「だって……」
フジにはナギラの話がファンタジーに思えるのだろう。夢見るように話して行く。
「ナギラさん、人に近付くなと言われていたのに、代表が所有していた狩場に入り込んで、それで追随していた家臣に見付かって、弓矢で追い立てられてしまったんだ、だけど代表の〝捨て置け〟という命令で助かったんだよ、ナギラさんはそこに恩義を感じている、あの当時は子供に毛の生えたようなもので、子供は好奇心旺盛でしょ、代表の鷹狩りを興味津々に眺めていたそうだよ、でも見付かって、もう逃げられないと諦めた時に、御台様が代表に口添えしてくれた、それがなかったら異形のものと晒し者にされていただろうと話していたよ」
ここで少しだけ明るさに翳りが差した。フジは〝異形のもの〟という響きに、ヴァンパイアの自分を重ね合わせたようだ。微かに体を震わせるが、フジ自身は気付いていないようにもアスカには見えた。フジの口調は明るく元気なままだった。
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